標高3600mのラサでも更に高い郊外の山上は真夏ながら深夜の寒さはかなりなものだった。厚手のキルティングを着込んでいるものの、折角日本から持参した使い捨てカイロをホテルに置いてきたことが悔やまれた。真っ暗な中、険しい山肌に腰を下ろして待つこと一時間。ようよう空が白みかけ、前方の斜面に沿って組まれた鉄パイプのやぐらと、それを取り囲む大群衆がうっすらと見えてきた。若い僧の一団が整列し、長い巻物を運び上げてやぐらの上から広げ始めた。それはタンカと呼ばれ、仏様の図像を描いたもの。
山陰から太陽が顔を出しタンカの左上に光が射したと思ったら、徐々にその範囲を広げ、仏様の顔に達した。燦然と輝きだしたその像の神々しさに震えるような感動が湧き上がった。ひと時の後、像はもうもうと焚かれるお香の煙につつまれ、僧たちの読経の声と低音の吹奏楽器が鳴り響く。
ふもとから続々と登ってきた群集がカタという白い布を供えて一心にお祈りを唱える。厳しい自然条件の中で生活する人々の信仰心は篤い。タンカは彼らを過酷な日常から涅槃への導きを約束するサインなのだ。
雪頓祭(しょとんさい)と呼ばれる、こんなにも劇的な祭りに立ち会えたことに感謝した。
(2003年1月)
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