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サンタ・マリア・ノヴェッラ教会は数あるフィレンツアの教会の中でもファサードの大理石が作るモザイク文様の美しさで随一とされ、私の好きな教会のひとつである。その教会が経営する薬局があり、日本でも名が知られていると聞いた。創業がなんと1612年という。今回のツアーでの訪問を楽しみにしていた。
ところが、教会の敷地をいくら探しても見つからない。ガイドブックをよくよく見れば、どうも教会のそばの路地に面しているようだ。そのあたりをうろうろしていたら、通りがかりの日本人女性が教えてくれた。でも、薬局という雰囲気ではない。
怪訝に思いながら暗くて殺風景なホールの先のドアを押したら、貴族の邸宅を思わせる典雅な空間が出現した。これが薬局?と一瞬疑ったが、壁際のガラス棚には古風な薬ビンらしきものがずらりと並び、怪しくきらめく。そんな部屋が三室も連なり、薬品だけではなく、自家製の石鹸や香料からリキュールまで売っているのだ。
帰り際、改めて店頭のサインに目をやった。そこには教会名のほかは、ミドリ十字も薬局のやの字もなかった。道理で見つけられなかったはずだ。 |
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