オーストラリアでは数々の珍しい自然景観が見られるが、私が最も印象的に感じたのはカンガルー島のリマーカブル・ロックという岩場だった。
海沿いに忽然とお椀を伏せたような花崗岩の一枚岩が突出し、その上に奇妙な形をした大小の岩塊が載っている。あるものはヘンリー・ムーアの彫刻のように力量感に満ち、あるものはダリの描くシュールな風景から抜け出たように奇怪な曲面を見せているのだ。
それらの不思議な造形物を載せたテーブルは滑らかな斜面を描き海に落ちている。つかまるような突起がないから、足を滑らしたら大変だ。
そのため、安全のための注意書きがこと細かく掲示してある。しかし、私が何よりも効果的と思ったのは観光案内板の足元の碑銘板である。
海に落ちた旅行者を救助しようとして、逆に自らの命を犠牲にした勇気ある二人の人物を顕彰したものである。碑の脇には一株の野花が添えられ、この悲劇を鎮魂していた。
案内板と碑銘板の組み合わせは珍しいが、岩場に向かう足取りにおのずと気の引き締まるものを感じた。 |