アブダビは七つの首長国で成り立つアラブ首長国連邦の中でも最も裕福で、連邦国の首都でもある。ペルシヤ湾沿いに位置し、入り江の対岸からの都市の眺めは海のかなたに高層ビルが建ち並び、とても砂漢の国のものとは思えない。ほんの三十数年前に突如吹き出た石油がこの都市を生み出した。それは夢のような出来事であり。幻想に満ちた現実でもある。
街中のビルは装飾性豊かで道路は広い。その光景はビルとビルの間に時々顔を見せるモスクの丸いドーム屋根を除けばロサンゼルス市内の情景と大差ない。尤もネオンサインの多いことでも、ここは他の都市にはない特異な貌を備える。
派手なネオンが四周の壁面を囲むビルは商業店舗なのだろう。その一廓にこれも輪形のネオンが点滅する矢印付きのサインがあり、なんの店かと思いつつ近寄ってみたら、焼肉のファーストフード店。天井からぶら下がった大きな肉塊を囲んで人々が群がっていた。
石油成金のこの国では人口の9割はよその国からの出稼ぎ者である。残る1割の自国民は労役に就くことを嫌い、9割の外国人が日々の労働によってこの国を底辺で支えているともいえるが、この店の客もそんな人たちなのだろう。
(1994年 6月)
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